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企画でこのせつSS第七十七弾

企画でこのせつSS第七十七弾です。

『毎土!このせつSSいかがですか?』

ちょっと過去に遡ってみました。

2月6日分のです。


さて使用お題
『電話』『優』『霧』

暗いです。
暗いの苦手な方はお逃げください。

SSは続きから。


淡い青色の四角い箱を、じっと眺めた。
カーテンの隙間から入る月明かりにが、やわらかくその箱を照らしている。

そっと触れると、箱についた鎖が小さく音をたてた。

鎖には、SがふたつとKがふたつ、寄り添って月明かりを反射する。

ただのイニシャルなのに、それにすら重く鈍い感情がわいてくる。

『これだと、いつも一緒ですね』

その暗く重たい気持ちをはねのけるように、彼女の柔らかい優しい笑顔が浮かんできた。





久しぶりにふたりで出かけたとき。
ビーズやアクセサリーを扱うお店の前を通りかかったとき。
珍しく、あの子の足が止まった。
うちが寄りたいから、と誤魔化しながらお店に入って、商品を見る振りをしながら彼女を観察。
素直で正直なあの子は、すぐ目的のもののところに行き、ずっとそこから動かなかった。

「それ、気になるん?」
「へ?」

彼女の視線の先には、ばら売りされているビーズやイニシャルの文字。
紐もあって、自分で好きなように組み合わせてストラップやネックレスを作れるらしい。

「そや、一緒つくろか」

そう誘ったら、驚いた顔が嬉しそうなものになった。

あれじゃない、これはどうだろう、ではこっちは?
ふたりで頭を寄せ合って、いろんな組み合わせを試した。

お店を出たのは、入ってから一時間もたったあとだった。
思った以上に夢中になっていたらしい。

「けっこうかかりましたね」
「そやねー、ビーズってけっこうするんやね」

予定外の出費で、予定を変えてそのまま帰ることに。
でも、そのまま帰るのはもったいないから、と公園によることにした。

ベンチに座ってすぐ、紙袋から作ったストラップを取り出して嬉しそうに眺め始めた。

「携帯につけたら?」

たしか、彼女の携帯にはこういったものは付いていなかったはず。
提案したら少し照れたように笑って、いそいそつけ始めた。

淡い青色の携帯に、赤色のストラップはちょっと違ったかもしれない。

でも、それでも彼女は嬉しそうに笑っていたからいいことにする。

「けっこうずっしりしますね」
「イニシャル4つやからなー」

Sがふたつと、Kがふたつ。
イニシャルはひとつでも結構重さがあるから、よっつもあればだいぶ重いだろう。

「でも、これってなんだかお嬢様がすぐ傍にいるみたいです」
「え?」
「え、あ……」

自分で気付いて恥ずかしくなったのか、赤くなってだんだん顔が下がっていく。
いつもなら、そんな彼女を見てすぐからかいたくなるけど、そのときは違った。

「なぁ、せっちゃん」
「な、なんでしょう……」
「もういっかい、もういっかい言って?」

なにを思ったのか、からかいやおふざけとかではなく、もう一度と、うちは彼女にお願いした。
ぱっと顔をあげてあたふたしていたけど、うちを見て覚悟したのか、ぐっと力を込めるとそのままふっと力を抜いた。

「これだと、いつも一緒ですね」

まっすぐとうちの目に、柔らかく優しい表情の彼女が映った。




いつも彼女にそういうことを言うのは、うちのほうだった。
彼女はそれを聞いて照れたり慌てたりするだけ。
だからたまに怖くなった。
うちだけじゃないのか。
従者という立場で、無理矢理付き合ってくれているのではないか。

そんな中の、あのひとこと。

暗くて重たい嫌なもやもやとした霧は、すっかり晴れていった。


そう、晴れていったはず。

けれども、その霧はまたうちの心を覆った。

会えない一週間。

連絡できない一週間。

『仕事で一週間ほど留守にします。今回のはちょっと特殊でして……その、これを預かっていてもらえますか?』

そうしてこれを預かって四日目。

『いつも一緒』

そう言ってくれたのに。
ストラップだけでも持っていってくれてもよかったんじゃないだろうか。

「……せっちゃんのばか」

彼女の携帯を、ぱしっとはじく。
寄り添っていたイニシャルが小さく音をたてて離れ、どうしようもなく泣きたくなった。




おしまい

あれ、どうしてこんなことに?
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