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企画でこのせつSS第十二弾

企画でこのせつSS第十二弾です。

『毎土!このせつSSはいかがですか?』


今回からさっちゃんさんのお宅に提出だそうですね。
と、思ったら発見してくださるそうです。

ここは影が薄いので、発見されなかったらどうしようかどきどき。
やっぱり自己申告してこようかしら;



さて今回のお題
『神無月』『百合』『お月見』

過去話から始まってます。

百合とお月見の使い方が微妙におかしいですけど、お気になさらず。




SSは続きからどうぞです。




『にがてなものはにがてなんです』








師匠の用事で、近衛家で夕飯をいただくことになった。
それを聞いた時、お嬢様が飛び跳ねて喜んでいた。
もちろんそれは私も同じで。

「せっちゃんとゆうごはんいっしょに食べるんはじめてやな」
「そうやね」
「なんやろな、きょうの夕ごはんなんやろな」
「たのしみやね」
「うん」

夕食までの時間、おなかをすかせようと、思いきり遊んだ。
家の中でも、外でも、駆け回った。



そして待ちに待った夕飯の時間。

目を輝かせるお嬢様の隣で、私もひとつひとつおいしそうな食べ物が乗ったお皿を眺めてく。
白いご飯にお味噌汁、煮魚、お漬け物や名前のわからないもの。

そして、次の瞬間、私は固まった。


「残さずいただきましょうね、刹那」

師匠は意味深に私にそう言ってほほ笑んだ。





隣のお膳の様子を盗み見しながら箸を進めていたら、とうとう恐れていた時がきた。

「ごちそうさまでした。あれ、せっちゃんまだなん?」
「う、うん……」
「いつもうちより食べるのはやいのに、めずらしいなぁ」

そう言って、私の目の前にあるお皿を覗き込む。

「なんや、あともうちょっとやん。ならはよ食べてもうちょっとあそぼ」
「……うん」

そう、あともうちょっと。
あと一皿なのだ。
けれど、そのひと皿がとてつもなく問題。

「刹那、全部食べたら、もう少し遊んでいなさい」
「はい……」

師匠はそれだけ言って、またどこかへ行ってしまった。

残った一品を、スプーンで少しずつ、少しずつ、すくい取って食べていく。
少しずつ少しずつ、少しずつ。

「なぁせっちゃん、なんでそんなちょっとずつ食べるん?」
「……」
「もしかして、きらいなん……ちゃわんむし?」
「ちゃ、ちゃわんむしはきらいやない」

もし嫌いならちょっとずつでも食べられんよ。
スプーンを噛みながら、ちょっとだけそういった視線を送る。

「じゃあなんで?」

興味津津といった様子でこちらをみつめてきた。
このまま黙っていても、彼女は諦めない。

「……なん」
「ん?」
「……ぎんなんが、にがてなんよ」

正直、彼女にこんなことを言うのは恥ずかしかった。
だから、彼女の顔が見れずに目の前の茶碗蒸しを見る。

「へ? ぎんなん?」
「うん……」
「ぎんなん入っとらんよ」
「……へ?!」

勢いよく顔をあげるとお嬢様のにこにこ笑顔があった。
にこにこ笑顔だけれど、はよ食べて遊ぼ、というオーラがにじみ出ている気がする。

安心して、ぱくぱく食べていたら、底の方に丸いものが。

「このちゃんのうそつき」
「ん?」
「ぎんなんあるやん」
「へ? それぎんなんやないよ」
「ならなんなん?」
「ゆりね」
「ゆりね?」
「うん。このまえおしえてもらったんよ。ユリの花のねっこやって」

初めて見る『ゆりね』をスプーンに乗せてまじまじと見る。
未知の食べ物だから、なかなか口に入れる決心がつかない。

「せっちゃん、それ貸して」
「これ?」
「うん」

指さされた茶碗蒸しのお皿と百合根の乗ったままのスプーンをお嬢様に渡す。

「はい、あーん」
「な、ななななな」
「だってせっちゃん食べようとせんのやもん」
「じ、じぶんで食べられるよ」
「あかん。もうまちくたびれたからだめ。ほら、せっちゃんあーん」

覚悟して、ゆっくりと口を開いたら素早く口に入れられた。
もぐもぐと噛み砕いて、ごくんと飲み込む。

「……おいしい」
「へへ、そやろ?」
「うん、これなら食べられる」
「ならよかった。ほら、はよ食べてあそぼ」
「う、うん。あ、このちゃん」
「なに?」
「あ、あの、さっきのあれ、おししょうさまには」
「言わんよー。だいじょうぶや。おつきさんしかみてないしな」

窓の外を見ればまん丸お月さま。
あ、でも。

「かみさまが見てる!」

いつだったか、いたずらが師匠にばれたとき、どうしてわかったのかとたずねたらなんでも見ている神様が教えてくれたと教えてくれた。
つまり、さっきのこともきっと……。

「きょうは十月やからかみさまおらんよ」
「そうなん?」
「うん、かんなづき、いうんて」
「へぇ……このちゃんものしりやなぁ」

やっと心の底からほっとして、茶碗蒸しの残りを口に運ぶ。
これで空のお皿がならんだ。

「ごちそうさまでした」

両手を合わせて感謝の言葉。
それを言ったら夕ごはんはおしまい。

「あそぼ、このちゃん」
「うん」

そのあとも全力で遊んでいたけれど、昼間走り回った疲れと夕飯を食べての満腹感で、気がつけば眠っていた。









「朝起きたとき、すごく驚いたんですよ」
「あはは、うちもや。寝てしもうた、せっちゃんに謝らな、って」

昔話をして、お嬢様お手製の茶碗蒸しを口に運びながら、ふたりで笑う。
だいぶん食べて、容器の底のほうに丸い物が見えた。

「……お嬢様ぁ」
「あはは、好き嫌いはええ加減なおさんとな?」

口に入れて、ひと噛みした瞬間口に広がった味は苦手なそれ。
昔みたいにお嬢様は甘くはないようです。



おしまい




※※※※※※※※
百合は百合根、お月見は月が見てるということで使用。
お月見は月を見るだけではなく、見られてもいますからね。
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